国際養蜂会議2019とCOLOSS会議2019参加報告(プロジェクト研究員 マキシミリアン・スピーゲルバーグ)

FEAST HQ WG3, レポート, 学会

2019年9月6日-12日にかけて、カナダ・モントリオールに滞在し、世界中から154名を集めた第15回COLOSS会議と第46回国際養蜂会議「農業の中の養蜂」(Apimondia)に参加してきました。COLOSS (Prevention of Honey Bee COlony LOSSes) はミツバチの研究に特化したネットワーク団体で、大規模に起こっているミツバチの群れの消滅について研究を進め、その解決策を見出すことを目的としています。14年前にヨーロッパで創設され、現在では世界95カ国で1,275名が会員となっています。国際養蜂会議は、国際養蜂協会連合が2か年に一度開催する国際会議で、今回は世界中から、6,000名の研究者、養蜂家、普及員、販売・流通業者が集まりました。

国際養蜂会議の様子

CLOSS会議では、スローフード・インターナショナル(日本支部の情報はこちら:日本スローフード協会)と協力覚書(MOU)が締結されたことが発表されました。スローフード・インターナショナルは、ローカルフード運動において主要な役割を果たしてきた団体ですが、ミツバチの受粉媒介者としての役割の重要性を深く認識しており、今回の覚書締結に至りました。さらに、現在進められているコアプロジェクトやタスクフォース(農薬、ミツバチ群の無治療生存、ヨーロッパにおけるツマアカスズメバチ(Vespa velutina)のまん延、ウイルス感染、ハチミツの栄養価、科学と実践のアウトリーチ)からこれまでの活動と、今後のイベントや研究活動計画についての報告もありました。参加者の間では、ネットワーキングが活発に行われ、さまざまな方向に向けた共同研究(資金獲得)や共同執筆についての話が行われていました。これは、FEASTプロジェクトにとっても、日本やアジアのミツバチ研究者や養蜂家にとっても、良い機会となるでしょう。

続く、国際養蜂会議では、過去2年間の地球研・FEASTミツバチチームの研究アプローチについて、「Engaging bee-stakeholders for a bee-friendly Kyoto: A transdisciplinary research process(ステークホルダーを巻き込んだミツバチにやさしい京都づくり:超学際的研究プロセス)」と題し、数百名の参加者を前に発表させて頂きました。(自然科学ではなく)社会科学・人文学的観点から、トウヨウミツバチ(A.cerana)や日本の現状について焦点を当てましたが、他にそういった報告がなかったこともあり、非常に多くの方に興味を持って頂きました。

本会議への参加は、世界中から集まった参加者の方々と新しいネットワークを広げ、また昔からの仲間との結びつきを強める機会ともなりました。また、最新の研究動向や研究成果について、ポスター、発表、パネルディスカッションから学ぶこともできました。私が、個人的にFEASTでの研究と関連して重要だと考えるものについて、以下に記します。

● 現在のグローバルフードシステム、中でも北米のフードシステムは何度も議論の対象となり、確かな科学データの根拠を基づき、厳しく批判されました。農薬散布や景観変容による害が報告され続ける中、生物多様性を後押しし、受粉媒介者を守る、アグロエコロジー放任養蜂(extensive beekeeping)といったオルタナティブな実践が認知されてきています。
● 日本の趣味養蜂家の間で一般的な実践は、基調講演を行ったトム・シーリー(Tom Seeley)氏が「ダーウィン的(Darwinian)」あるいは「ミツバチ中心主義養蜂(Apicentric-Beekeeping)」と、ニコラ・J・ブラッドベア(Nicola J. Bradbear)氏(Bees for Development)が「放任養蜂」と呼び、世界の多くの地域で実践されているものに近いことがわかりました。広く実践されており、工業的なセイヨウミツバチの養蜂とは対照的に、こうした養蜂のあり方は、景観との関係性、文脈、対話を通して地域に根付いており、セイヨウミツバチでなく地域のミツバチ種が用いられており、より持続可能であると言えます。
● 世界中で養蜂プロジェクトは増加しています。中でも、都市部においては、巣の生態やハチミツといったテーマだけでなく、巣箱の周りに存在する人間や環境の社会的・心理的側面についても取り組むプロジェクトが実施されています。報告者の方々は、ミツバチとのつながりがコミュニティや環境にもたらす恩恵について強調されました。バンクーバーの例をこちらからご覧頂けます。
● 世界中でハチミツ詐欺も大きな問題になっていますが、その調査方法も改善しつつあります。フェデリコ・ベロン(Federicco Berron)氏(メキシコ)は、イギリス、アメリカ、日本の3ヵ国で5つずつ購入した最安値のハチミツと呼ばれる商品には、本物のハチミツが一切含まれていないことを報告しました。また、J・ティアン( Tian)博士(中国)は、中国国内にて高値で販売されているトウヨウミツバチ(A.cerana)のハチミツ71種について検査を実施しました。その結果、たった15%が実際にトウヨウミツバチのものであり、他はセイヨウミツバチ(A. mellifera)のもの、あるいは本物のハチミツでさえないものも含まれていることが判明しました。消費者の観点からすると、地元産のハチミツ、理想としては養蜂家や専門店から直接購入することで、だまされる可能性を削減できるということです。適切に検査を実施した上でのラべリング、独立した検査機関での検査、より包括的なデータベースなどを確立することにより、消費者だけでなく、養蜂家の地位も強化することが可能となるでしょう。
● 報告された研究の大半は自然科学分野のものが主流で、工業型農業の文脈において家畜として用いられているセイヨウミツバチに焦点を当てたものが大半でした。しかし、自然科学の域を超えた取り組みの必要性についても、その理解は深まってきています。研究目標や助成金の設定についても転換が必要です。
● 残念ながら日本人の参加者には一人もお会いしませんでした。一方で、日本以外の東アジア諸国からは、研究者、養蜂家、企業関係者などが多く参加していました。日本国内でも素晴らしい取り組みが展開されており、ニホンミツバチのハチミツはオーガニック製品として今後の可能性も高いことから、こうした流れを変えていく必要があると考えます。

最後にモントリオールの備忘録です。モントリオールは、緑地、街路樹、各家庭に庭などが多く、非常に住みやすい街であるという印象を受けました。こうした取り組みの背景には、1967年に開催されたモントリオール万国博覧会があります。そこには、アメリカのパビリオンとして建設されたバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)のジオデシック・ドームや、モシェ・シャフディ(Moshe Safdie)が設計した全室ベランダ付のアビタ67団地などが含まれます。また、自転車用レーンや無料駐車場に加え、シャアバイクのシステムも広く導入されており、その取り組みに非常にポジティブな印象を受けました。

(和訳:Yuko K.)

アビタ67団地

同左

ジオデシック・ドーム

ドームの内側の様子