展示「未来の学校給食」のはじまり(プロジェクト研究員 マキシミリアン・スピーゲルバーグ)

FEAST HQ WG3, レポート

FEASTの展示企画「未来の学校給食」は約1年前、地球研のオープンハウスの企画としてはじまりました。では、まずオープンハウスの説明から始めたいと思います。

地球研オープンハウスは、毎年夏の恒例行事で、研究所を一般公開し各プロジェクトが研究テーマに沿った企画を行います(本年度は11月15日&22日にオンライン開催予定)。夏休み中の開催ということもあり、多くの小中学生が親やおじいちゃんおばあちゃんと一緒に来所し、夏休みの自由研究の参考にする子も多くいます。2019年度は800名に上る来場者がありました。

「あなたにとって良くないごはんは?」(2017年度オープンハウス)

FEASTでは、過去のオープンハウスにて他の企画と併せて、「あなたにとって悪いごはん」と「あなたにとって良いごはん」をテーマとしたワードクラウドを実施しました。また、2016年度の企画「みんなでつくる『おいしい』のすがた」では、京都のフードスケープを来場者に自由に描いてもらいました。

地球研では、フェローシップ外国人研究員制度を通じて、2018年度にユトレヒト大学持続可能な発展に関するコペルニクス研究所のヨースト・フェルフォート(Joost Vervoort)助教を、2019年度には英国キングスカレッジロンドンのクリスティーン・バーンズ(Christine Barnes)氏を招聘しました。こちらの2名の研究者は、未来研究、シリアスゲーム、そして食と視感(visuality)を専門としており、FEASTチームはその研究からインスピレーションを受けました。また、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんとフライデー・フォー・フューチャーが知られるようになり、食と農の未来会議・京都でも学校給食が重要テーマとして選ばれた時でもありました。こうした背景を受け、日本の未来の学校給食はどのようなものになっているだろうか?という疑問に行き当たりました。

FEASTプロジェクトリーダーのスティーブン・マックグリービー(Steven McGreevy)は、「国際貿易への依存」(食品貿易のグローバル化が進むか、国内取引が中心となるか)と「気候変動」(パリ協定で取り決められた気温上昇を1.5℃以内に抑えることができるか否か)のマトリクスに基づき、初版の企画案を草稿しました。そこから、プロジェクト内で協力し、国内外のエコシステムモデル、気候変動シナリオ、政治的・経済的分析、食品技術の進展やマーケティング傾向に関する研究論文や報告などから情報を得てマトリクスに埋め込み、より幅広な見識となるようシナリオをブラッシュアップしていきました。

「国際貿易への依存」と「気候変動」に基づいたマトリクス

シナリオごとの給食サンプル

 

 

 

 

 

 

こうして作成したシナリオから、以下の3点を取り込みながら給食の献立に反映していきました:(1)馴染みのある形や色味を拡張しつつ、材料がこれまでにないものを組み込む、(2)現代の日本食にはないものを1つ以上取り入れる、(3)「インスタ映え」するような見た目を取り入れる。そして、ブラッシュアップと翻訳(担当:推進員小林優子)を綿密に行い、献立が完成しました。最後の難関は、展示用給食サンプルの製作です。購入可能なもの、援用可能なものもありましたが、一部は推進員の松岡祐子がゼロから製作しました。

食品貿易のグローバル化は進んだが、気候変動を抑制できた未来の給食献立

食品は主に国内生産され、気候変動も抑制できた未来の献立(投票率No.1)

 

 

 

 

 

 

実際の展示では、来場者のみなさんは、ゆっくり時間をかけてシナリオと献立表に目を通し、給食セットを観察していました。最後に、大人と子どもごとに、どの献立を食べてみたいと思うかについて、投票してもらいました。こうすることで、アートを通じた視感に訴える研究成果を発信という目的だけでなく、新たな調査にもつなげていくことができます。

2019年度オープンハウスでの未来の給食展示の様子

2019年7月のオープンハウス以降、京都市、亀岡市、長野県小布施市での食に関するイベントでも、この給食展示を実施してきました。各イベントで食べたい献立の投票も行いましたが、現時点では、予備調査結果のほうが興味深いのではと考えています。以下に、簡単にまとめました。
(1)学校給食は、日本において祖父母世代から孫世代にまで渡るあらゆる人々の文化的体験を体現するものであり、こうした共通の背景が人々の関心を呼び起こし、気軽に議論や会話を広げるきっかけになったと考えられる。
(2)本展示は、これまで広く無条件に受け入れられていた価値観、世界観や未来の道筋に関する見解を、慎重に疑問視することに寄与できるものである。現状に関する固定観念から離れて、リアルな未来の学校給食を観察し、また未来に関する選択を行うことで、多くの来場者は自身のメンタルマップを探索し、現在のフードシステムのあり方を疑問視することにつながったと考えられる。
(3)気候変動は、現代社会の直面する課題の中でも最も深刻なものとも言えるが、日本の政策立案者、メディア、そして一般においては、喫緊の課題であるという理解が欠如している。本展示は、日本のフードシステムはいずれにせよ変化することを示しつつ、市民や社会全体が取り組むことのできる活動についても例示している。

展示の製作過程で、私は冗談まじりに、2050年には子どもたちが学校に通うこともないかもしれないと話していたのですが、その時は、まさかこんなにもすぐにその日がやってくるとも、無邪気に笑っている場合ではなくなるとも思いもよりませんでした。

そうした中で、地球研からの経費支援を受け、展示の再設計を行うこととなり、田辺エリー氏(グラフィックレコーダー)にシナリオのポスターを、今田光祐氏(二級建築士)に持ち運び可能な展示台も作成して頂きました。

アップグレードした展示1

アップグレードした展示2

 

 

 

 

 

展示はアップグレードしたものの、予測しえなかった新型コロナウィルス感染症の影響を受け、4月のアースデイきょうとなどのイベントが開催中止となりました。そこで、現在、本展示のデジタル化を進めています。より多くの方にご覧頂き、フードシステムの今と未来を思い描き、検討することにつながればと考えています。

(和訳:Yuko K.)